通り雨が降り出した。

「雨だ」

彼が折りたたみ傘を開く。
3年前の彼の誕生日に、私とお揃いで買ってあげた傘だ。
スカイアンブレラという名のその傘は、内側が空模様になっていて雨の日でも空が見える。

「離れていても、僕らは同じ空を見ているんだね」

彼が満足そうに傘を見上げて言った。
私は鼻で笑って、吐き捨てるように呟いた。

「あなたと同じ空を見た事なんて一度もないわ」
 
2017/06/04(日) 17:56 [001] PERMALINK COM(0) TB(0)
 
私達は真夜中の渋谷を、一晩中キスをしながら歩いた。
ガードレールの脇で、電柱の影で、自販機が光る路地裏で。
信号が青になったっておかまいなし。
私達は横断歩道の真ん中でだって立ち止まってキスをした。
誰もいない。車も通らない。
今夜、この街は、私達だけの物なのだ。


もうすぐ夜が明ける。
踏切の手前で、カンカンと音が鳴ったので立ち止まった。
隣を見ると、さっきまで手を繋いでいた彼女が、いつの間にか消えていた。

目の前を電車が通り過ぎる。
遮断機が上がった。
踏切の向こうで彼女が笑っている。
私は彼女に駆け寄り、この夜 186回目のキスをした。


もうすぐ夜が明ける。
 
2017/06/04(日) 04:07 [003] PERMALINK COM(0) TB(0)