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私達は砂漠にいた。
目の前には古びた螺旋階段があり、満月に照らされて暗い夜空に永遠のように伸びている。

「どうする?」

ペットボトルの水を飲みながら彼が訊ねる。
夕方オアシスでペットボトルに汲んだ水が、二人のリュックにたくさん入っている。
しばらくは水の心配はいらないだろう。

「行くしかないわ」

彼が力強く頷く。
私達は覚悟を決めて階段を昇り始めた。


鉄筋の螺旋階段をひたすら昇り続ける。
いま、地上何メートルくらいだろう。

「知ってる?砂漠のことわざで、階段を昇り切った先にはコブラがいるんだって」
「何よそれ、聞いたことないわ」
「だろうね。今、俺が思い付いたんだから」

後ろからついて来ている彼がにやりと笑う。
その顔がやけに憎たらしかったので、蹴っ飛ばすわよ、と言ってかかとで軽く彼のおなかを小突いた。

「だけどこの階段、まるでコブラの腹の中みたいだと思わないかい」

そう言われて、足下を見る。
昇って来た階段は既に真っ暗な闇に飲まれ、ほとんど見えなくなっていた。

「コブラに飲まれそう」

彼がまたにやりと笑う。
私達は満月の明かりだけを頼りに、コブラの腹の中を延々と昇り続けた。
 
2017/06/23(金) 23:31 [001] PERMALINK COM(0)
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