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エンヴィ
大勢の人がいた。
私は、その大勢の中の一人でしかなかった。
埋もれたくない、と思った。
そして、皆消えて私だけになればいいのに、と祈りながら目を閉じた。
そこで意識が途絶えて、次に気が付いた時、私は地面に這いつくばっていた。
この匂いは。
朦朧とした意識の中、微かに漂う懐かしい香りに目を開けた。
逆光でよく見えないけれど、シルエットで彼だと分かった。
女の私より長い金髪が太陽に照らされてキラキラと光っている。
「お前しか残らなかったか」
彼が私の目前に膝をついた。
罪深い彼の香りが鼻孔をくすぐる。
私以外にいた人間は皆死んだ。
私は精一杯の力を振り絞って微笑む。
祈りが届いたのだ。
この匂いが分かるのは、世界中で私一人だけでいい。
2017/06/24(土)
23:08
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