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日曜の午後。
教会にも行かずレジャーにも出かけなかった私達は、
アパートメントのバルコニーでお互いの髪を切り合っていた。

「君の髪はまるでドールみたいだね」

私の髪に櫛を通しながら、彼がうっとりと呟く。

「それはいい意味で?」
「もちろん、とびっきりいい意味で、さ」

ざくっ、と髪を切る音が耳をかすめる。
彼はとても器用だ。
私はあっという間にいつものジャパニーズ・ドール・スタイルにされてしまった。

「俺以外の男に髪を切らせないで」

顎のラインで切り揃えられた私の髪に頬ずりしながら彼が囁く。
その仕草があまりにも子供じみて見えたので、思わず笑ってしまった。

「だったら私より長生きしてよ、ダーリン。いつまでも私の髪を真っ直ぐにカットして」
 
2017/11/15(水) 03:32 [001] PERMALINK COM(0)
 
彼がひどく切羽詰まった顔で突然謝り始めた。

「ごめん、俺は君にとてもひどいことをした」

謝って許されることじゃないけど、と彼は頭を垂れた。
私はそっと彼の肩に手を置いて、顔を上げるように促した。

「気にしてないわ。誰だって間違うことはあるもの」

彼はひどく驚いて大きく目を見開いた。
そして口を開きかけたまましばらく考え込んで、私の顔を見つめてこう言った。

「まるで君が別人のように感じるよ」

何かをごまかすように鼻の先を擦りながら彼が笑う。
私は黙って微笑み返した。
 
 
本当に。
いつだって、誰よりも鈍くて可哀想な人。
別人なのだと気付くまでに、あと何時間かかるのかしら。
2017/11/03(金) 02:47 [001] PERMALINK COM(0)
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