「ほら、写真を撮って。君のとっておきの素敵なカメラで」

彼が嬉しそうにはしゃいでウィンクする。
カウンターをちらりと見てフィルムの残り枚数を確認し、彼の笑顔にピントを合わせてシャッターを切った。
残り15枚。
私はカメラの蓋を開け、一気にフィルムを引き抜いた。

「そのカメラも持って行って。私の思い出と一緒に」
 
2017/12/10(日) 03:59 [001] PERMALINK COM(0)
 
「写真を撮ってよ」

彼が私にカメラを向けながら言った。
そのカメラはとても小さいおもちゃのようなカメラで、数年前の誕生日に私がプレゼントしたものだ。

「あなたが撮るんじゃないの?」

私は少し苛立ちながら、向けられているレンズを手で遮った。

「僕は目に見えるものしか撮れないからね。
 君なら何だって撮れるだろう?たとえば僕たちの思い出とか」

そう言って彼はパチッ、とチープな音を立ててシャッターを切った。
今撮られた写真の不自然なほど鮮やかなコントラストを想像して私は目を閉じた。
過去ならどんなことでも簡単に思い描ける。
ひどく不自然な、クレヨンで塗りつぶしたような歪んだ思い出も。
 
2017/12/08(金) 22:55 [001] PERMALINK COM(0)