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久しぶりに何もない休日だった。
その日はとても天気のいい日で、僕たちは朝食のためにコーヒーメーカーをセットしたあと、
住んでいるアパートメントの屋上に洗濯物を干しに上がった。


老朽化した旧時代の高層アパートメントの屋上はコンクリートが剥き出しで、
あちこちに折れたアンテナが立てられたまま放置されている。
僕たちはその合間を縫って洗濯物を干さなければならない。

シーツのような大きなものは場所を取るので、梯子で物干し台に登って干す。
僕がアンテナ広場で小さなものをせっせと干していると、大きなシーツを干し終わった彼女が突然声を上げた。

「ねえ、私たち 100年前にもこうしていたと思わない?」

シーツの合間からちらちらと顔を覗かせて彼女がはしゃぐ。
コンクリート、ひしめくアンテナ、足下に広がる青空とビルの群れ。
きっと彼女にはかつて存在した、見たこともない城の屋上の景色が見えているのだろう。

僕は彼女の手から残りのシーツを取り上げて、もう片方の手を彼女に差し出した。

「さあ、そろそろ帰ろう。コーヒーが冷めないうちに朝食を食べなきゃね」

彼女はとびっきりの笑顔を見せて、梯子の上から飛び降りた。
 
2018/01/20(土) 03:57 [002] PERMALINK COM(0)
 
雪が降った。
 
真夜中の国道であなたが微笑んだ瞬間、雪が降りだした。
それはまるであなたが魔法をかけたようだった。
 
雪はどんどん積もっていく。
銀色に変わっていく夜の真ん中で、あなたが微笑んでいる。
あまりにも美しすぎて、私は思わず目を閉じた。
 
 
雪が降り積もる音が弱くなった気がした。
そっと目を開ける。
目を開けても、もうあなたはいなかった。
ようやく気づいた。
これは雪ではなく、私の想いが、祈りが雪のように降り積もっているのだと。
 
 
 
snowed
 
【例】It snowed 雪が降った
 
【形】だまされた
 
 
2017/09/16(土) 02:31 [002] PERMALINK COM(0)
 
無事に合流できた私達は、歩いて海に向かうことにした。
彼は半透明なので、バスに乗ることができない。
もちろん気づかれないように乗ることは可能だけれど、優しく正しい彼は決して"ズル"を許さない。


地図を持たずに来たので道が分からなかったけど、不安はなかった。
私には海のにおいが分かる。
きっと彼にも分かるのだろう。
私達は、何も言わずとも同じ方角に向かって歩いていた。

「まっすぐ歩いていけば、いつか海にたどり着くよね」

隣を歩く彼に尋ねた。
半透明の彼はずっと微笑んでいる。
海に着いたらアイスクリームを食べよう。
彼もきっと冷たいアイスクリームが好きなはずだ。


海を目指して。
オレンジの太陽が沈む方角に向かって、ひたすら歩き続ける。
私達の道のりは長い。
 
2017/05/30(火) 18:14 [002] PERMALINK COM(0)
 
駅前でずっと彼の幽霊が立っている。

最初は見間違いだと思った。
あの人がこんなところに居るはずがない。
だけど次の日も、その次の日も、一週間が経っても、彼はまだそこに立っていた。

幻じゃない。
彼はずっと待ってくれていたのだ。


行かなきゃ。

私はお気に入りのスニーカーを脱ぎ捨て、裸足になって一目散に走り出した。
両手を広げて待つ、半透明の彼のもとへ。
 
2017/05/30(火) 01:38 [002] PERMALINK COM(0)
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