彼が部屋の照明を消した。
もう眠ろう、という合図だ。
照明が消えた部屋は少し暗すぎたので、私はベッドの傍のカーテンを開けた。
深夜の街はほとんど真っ暗だったが、遠くでちかちかと赤色の何かが光っている。
しばらくその光を見つめていると彼がベッドに潜り込んで来たので、あれは何、と彼に尋ねた。
「ああ、航空障害灯だよ」
「航空障害灯?」
「飛行機が衝突しないように、ああして目印にしてるんだ」
初めて聞く言葉だった。
言われてみれば、遠くにもいくつか同じように点滅している光が見える。
私が赤い灯に夢中になっていると、彼は私の体を抱き寄せて「あんまり見ちゃだめだよ」と言った。
「どうして?」
「怖くない?何だか、ずっと見張られている気がして」
「全然怖くないわ。とても綺麗」
私達は、赤い障害灯に見張られながら抱き合ってベッドに沈み込んだ。
それから彼が私の指や首筋にキスをしている間、私はずっと暗闇の中で点滅する赤い灯を見つめていた。
COMMENT FORM