いつの間にか眠っていたらしい。
目が覚めると、そばで一緒に寝転がっていたはずの彼の代わりにストライプ柄のクッションがあった。
頭だけ動かして部屋を見回すと、テレビの前で彼が膝を抱えて座っている。
そういえば、今日は一日中映画を観るのだと言っていたっけ。
「おはよう、よく眠ってた」
背中を見せたまま彼が話しかけてきた。
私もベッドに入ったまま、会話を続ける。
「映画って言葉を聞くだけで眠くなるの」
「逆だね。僕は映画を観るんだって思うと目が冴えるよ」
ザザ、と微かな雑音が聞こえる。
彼はレトロな物を非常に好む。
この部屋にあるのは、とても古いブラウン管のテレビと、それよりも古いビデオデッキだ。
「このヒロイン、君に少し似てるよね」
「私、そんなにざらざらしてないわ」
「怒らないで。褒めてるんだ」
彼はテレビから目を離さないまま、まだあと16本も映画を観なければいけない、と言った。
彼がさっきからずっと観ているのは、何も映っていないただの砂嵐の画面だった。
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