目を閉じてまどろんでいると、突然奇妙な音が聴こえてきた。
頭の中で張りつめた糸がビィーンと揺れ続けているような、とてつもなく頭に響く音だった。
一体何の音なんだろう。
音の発生源を探るべく目を開けると、彼が窓際に座って優雅にバイオリンを弾いていた。
「なんなの、その音」
「僕の大事な楽器だよ」
「今はやめてくれない?頭が痛いの」
彼は何も答えずバイオリンを弾き続ける。
耐え切れなくなった私は思わず床を踏みつけて叫んだ。
「もうバイオリンの音なんか聴きたくないわ」
彼は演奏をやめた。
そして憐れむような目で私を見つめて、そっと呟いた。
「これは三味線だよ」
もう一度、彼が持っている楽器をよく見てみる。
それは確かにバイオリンではなく、三味線だった。
「ああ、そうね。わたし、バイオリンだって思い込もうとしていたんだわ」
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