「最近、頭の後ろが痛いんだ」
彼が首の後ろを押さえながらぽつりと愚痴を言った。
「大丈夫?病院は行った?」
彼は首を横に振ってため息をつく。
よく見れば顔色が少し悪い。
「大丈夫、病院に行くほどじゃないんだ。
でも、今までこんなこと無かったのに、どうしてだろう」
私は真顔で言った。
「実は、寝てる間に私が一本ずつネジを抜いてるの」
彼の動きが一瞬固まった。
それからとても神妙な顔つきになり、納得したというように頷いた。
「だから痛かったのか。ネジを返してよ」
彼はまた首の後ろを押さえながら、真剣な表情で私に迫った。
私はため息をついて、彼のおでこを思いっきり叩いた。
「いいからさっさと病院に行って」
「どうして」
「あなたが悪いのは頭よ。きっと重症だわ」
ばかばかしくなったので、立ち止まっている彼を放って先に歩き出した。
残された彼は私の姿が見えなくなるまで、
「でも、ネジを返してくれなきゃ治らないよ」と叫んでいた。
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