目が覚めたら、私はワンルームの小さな空間にいた。
昨日の夜は、三叉路の突き当りにある小さな店で 2杯目のファジーネーブルを飲んでいたところまでしか記憶が無い。
私はアルコールにとてつもなく弱いのだ。
もちろん、ここがどこで、ここに居る理由が何かも全く分からない。
「おはよう」
どこからか低い声が聞こえて来た。
動かせる範囲で目を動かしてみるが、視界には家具ひとつない殺風景な部屋と、自分が今座っている真っ白なシーツしか入らない。
「ここだよ」
もう一度、今度は はっきりと声が聞こえた方向に体を向けた。
よく見ると、真っ白い 2ドアの冷蔵庫がある。
そして開いている扉の中で、全裸の男が膝を抱えて座っていた。
「…何でそんなところにいるの?」
「ここが僕のベッドだからさ」
「でもそれ、冷蔵庫でしょう?」
男は嘲るように笑って、分からないか、と言った。
「この部屋には冷蔵庫が無いんだ。なぜならこの部屋が既に無限の小宇宙だから」
その答えを聞いて、私は立ち上がった。
「じゃあ、永遠にそこにいれば?」
そして私は小宇宙のドアを開け、朝陽の輝くすばらしい地球に帰った。
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