スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。
 
私達は円いテーブルを囲んで座っていた。
参加者は 5人。
この場にいる全員が"訳あり"だ。

「今日はきちんと話し合いたいと思う」
「話し合う?」
「そうだ、話し合いは大切だよ」
「笑わせないでよ」
「この紅茶、砂糖は入っているのかしら」
「僕は砂糖もミルクもいらないって言ったよ」
「そんなことより話を始めよう」
「わたし、ミルクティーじゃないと飲めないわ。今すぐミルクを持ってきてよ」
「あとでクッキーを持ってきてあげるから我慢して」

全員が一斉に好き勝手に喋って、会話にならない。
円卓を囲んで始まった議会は、瞬く間にヒートアップし口論に発展していった。


「ちょっと待って、話がどんどん逸れてる」
「何なの」
「誰が話を逸らしてるんだか」
「とりあえず話を聞こうよ」
「話になんかなってないじゃない」
「一旦落ち着こう。頭を冷やすんだ」
「頭より先に紅茶が冷えるわ!さっさとミルクを持ってきて!」
「待って、僕の話を聞いて」
「さっきから何の話をしてるの?」
「どうせまた誤魔化して、うやむやにするつもりだったんじゃないの」
「違う、僕はただ…」

もはや誰が喋っているのか分からない。
このままこの議会は収拾がつかないのだろうかと思ったその時。


「僕はただ、二人きりで話したかっただけなんだ」

一瞬で部屋が静まり返った。
物音ひとつしない。
全員が気配を殺している。


それから数分が経過した。
誰も身動きせず、発言もしない。

しかたない。
私は小さくため息をついて、口を開いた。

「何でそんなつまらない嘘つくの?」


パチン。
部屋の明かりがついた。
テーブルの上には紅茶の入ったカップが 2つ。
3つの椅子は空席で、正面の席で男がうなだれている。

何てことは無い。
この部屋には、最初から彼と私の二人しかいなかったのだ。
 
2017/05/29(月) 21:49 [001] PERMALINK COM(0)
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。

COMMENT FORM

以下のフォームからコメントを投稿してください