私は4度、彼から逃げた。
そして4度、彼とよりを戻した。
いつも私は必ず宣戦布告をしてから逃げた。
そうすることが"けじめ"だと思ったのだ。
そして彼は必ず追いかけてきた。
行先で待ち伏せていたこともある。
そして彼はいつも悲しそうにこう言うのだ。
やっぱり君がいちばん大事だよ、と。
だけど少し時間が経つと彼は忘れる。
一度別れたことも、私が大事だと言ったことも。
私を手元に置いていると安心して、こっちを向くことすらしなくなるのだ。
4度目に捕まった時、彼は言った。
「今度こそ逃げていいよ」
もちろんそのつもりだった。
今度は足音ひとつ立てず、彼が後ろを向いて安心しきっているうちに。
私は息をひそめて、気付かれないように、そっと左足を後ろに引いた。
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