ショーウィンドウに飾られたミニローズのティアラを見て、急に昔の事を思い出した。
昔はいろいろなものを頭に載せていた。
リボン、シルクハット、ティアラ、薔薇や葡萄で造ったヘッドドレス。
私はいつから頭に何も載せなくなったんだろう?
「君は僕のプリンセスだったからね」
隣を歩く彼がささやく。
「でも、あなたは私の王子様じゃなかったでしょ」
私は思いきり冷ややかな目で彼を睨みつける。
彼は特に気にするふうでもなく、肩をすくめてこう答えた。
「君が指輪を捨てたんじゃないか。もう気にしてないけどね」
本当にもう気にしていないのだろう。
そうだ、私は確かに彼が贈ってくれた指輪を捨てた。
それから薔薇の蔦のリボンで編んだティアラを置いて…。
「ねえ、ところでどうやって茨のリボンを抜け出したの?」
彼が「しまった」というような顔をした。
それと同時にショーウィンドウの中のティアラがめきめきと茨を伸ばしてガラスを破り、
あっという間に彼を締め上げた。
COMMENT FORM