snowed.
- - - - - - - - - - -
HOME
Admin
スポンサードリンク
この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、
プレミアムユーザー
になると常に非表示になります。
雨天決行
「雨が降ったら、デートは中止にしよう」
5年前の今日、彼はそう言った。
その時と全く同じトーンで、彼が言う。
「雨が降ったら、別れるのはやめよう」
私は透明な傘で彼と自分とのあいだに境界線を引いた。
これは私と彼の赤道線だ。
この線を境に、私達は二度と交わらない平行線になるのだ。
「たとえ嵐が来てもあなたと別れるわ」
彼が悲しそうな顔をした。
まるでもう彼の側にだけ雨が降っているかのように。
彼が右手に持っている傘を差す。
私も透明の傘を開く。
「空が見える傘も、何の役にも立たなかったわね」
彼の差す傘の内側に、鮮やかな空が広がる。
私達は境界線で向き合いながら、いつまでも別々の空を見ていた。
2017/06/29(木)
21:25
[001]
PERMALINK
COM(0)
戴冠式前夜
ショーウィンドウに飾られたミニローズのティアラを見て、急に昔の事を思い出した。
昔はいろいろなものを頭に載せていた。
リボン、シルクハット、ティアラ、薔薇や葡萄で造ったヘッドドレス。
私はいつから頭に何も載せなくなったんだろう?
「君は僕のプリンセスだったからね」
隣を歩く彼がささやく。
「でも、あなたは私の王子様じゃなかったでしょ」
私は思いきり冷ややかな目で彼を睨みつける。
彼は特に気にするふうでもなく、肩をすくめてこう答えた。
「君が指輪を捨てたんじゃないか。もう気にしてないけどね」
本当にもう気にしていないのだろう。
そうだ、私は確かに彼が贈ってくれた指輪を捨てた。
それから薔薇の蔦のリボンで編んだティアラを置いて…。
「ねえ、ところでどうやって茨のリボンを抜け出したの?」
彼が「しまった」というような顔をした。
それと同時にショーウィンドウの中のティアラがめきめきと茨を伸ばしてガラスを破り、
あっという間に彼を締め上げた。
2017/06/28(水)
22:52
[001]
PERMALINK
COM(0)
エスケープ
「私、時々あなたに追いかけられて逃げる夢を見るの」
「へえ、どんな?」
「こないだは廃墟になったショッピングモールで、最上階まで追いかけられたわ。
その前は夜のメインストリート、映画館や病院の日もあったわね。でも今日が一番ひどかった」
彼は頬杖をついて続きを促す。
「あなた、全裸で追いかけて来たのよ。空港のゲートで。正気じゃないわ」
夢で見た光景の恐ろしさを思い出して体が震えた。
全裸の男が全力で自分を追いかけてくる恐怖!
しかも夢の中の彼は満面の笑みを浮かべていたのだ。
そう、ちょうど目の前の彼と同じように。
「そりゃ正気じゃないだろうとも」
「どうして?」
「君の頭の中はちょっとした小宇宙だからね。僕なんてちっぽけな存在は、簡単に狂ってしまう」
彼はまだ満面の笑みを浮かべている。
ああ、だめだ。
これは、この目の前の彼も。
「これも、夢の続きなのね」
私は静かに立ち上がり、彼に背を向けて全力で走り出した。
2017/06/26(月)
21:30
[001]
PERMALINK
COM(0)
I'm lovin' it
夕方のハンバーガーショップは閑散としていた。
私はバニラシェイクを啜りながら、フライドポテトを追加しようか迷っていた。
テーブルの向こうで、彼が大きな口を開けてハンバーガーをほおばっている。
「ハンバーガー、好きなのね」
「アメリカにいた頃によく食べてたからね。でも、こっちの方が美味しいよ」
口の周りにケチャップをたっぷりつけた彼が嬉しそうに笑う。
そして突然何かに気づいたように顔を曇らせ、そのままうつむいた。
「僕の事、好き?」
彼が不安げに上目づかいで訊く。
大丈夫、愛してる。
5年後はわからないけどね。
私は思った言葉をシェイクと一緒に飲み込んで、代わりにニッコリ微笑んで一言こう言った。
「I'm lovin' it」
2017/06/25(日)
22:23
[001]
PERMALINK
COM(0)
エンヴィ
大勢の人がいた。
私は、その大勢の中の一人でしかなかった。
埋もれたくない、と思った。
そして、皆消えて私だけになればいいのに、と祈りながら目を閉じた。
そこで意識が途絶えて、次に気が付いた時、私は地面に這いつくばっていた。
この匂いは。
朦朧とした意識の中、微かに漂う懐かしい香りに目を開けた。
逆光でよく見えないけれど、シルエットで彼だと分かった。
女の私より長い金髪が太陽に照らされてキラキラと光っている。
「お前しか残らなかったか」
彼が私の目前に膝をついた。
罪深い彼の香りが鼻孔をくすぐる。
私以外にいた人間は皆死んだ。
私は精一杯の力を振り絞って微笑む。
祈りが届いたのだ。
この匂いが分かるのは、世界中で私一人だけでいい。
2017/06/24(土)
23:08
[001]
PERMALINK
COM(0)
スポンサードリンク
この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、
プレミアムユーザー
になると常に非表示になります。
TOP
NEXT
author : cocoa
フィクション
CALENDER
<<
2017年6月
>>
日
月
火
水
木
金
土
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
CATEGORY
[001]
(52)
[002]
(4)
[003]
(7)
ARCHIVES
2019年10月
(1)
2018年12月
(1)
2018年9月
(1)
2018年6月
(1)
2018年5月
(1)
2018年4月
(1)
2018年3月
(2)
2018年2月
(2)
2018年1月
(3)
2017年12月
(2)
NEW ENTRIES
sleep
(0)
ユー・ガット・メール
(0)
ムーヴメント
(0)
気づかれないうちに
(0)
グレイシャルラブ
(0)
NEW RECENT
SEARCH FORM
Link
:: vsco
:: instagram